卒業式 校長式辞
- 公開日
- 2026/03/06
- 更新日
- 2026/03/06
学校行事
【 式 辞 】
極端な寒暖を繰り返し、春はまだ遠いように見えながら、その気配は確かに世界を満たし始めています。本日、若園中学校第47回卒業式を晴れやかに挙行することができました。本校に数々のご支援を賜りました保護者の皆様、ご来賓の皆様に、心より厚く御礼申し上げます。
卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
先ほどの卒業証書授与、担任の先生に名を呼ばれ、万感の思いを込めて力強く返事をする皆さんの姿は、本当に胸を打つものでした。皆さんの返事は、まるでこの三年間のすべてを凝縮した声でした。練習の段階から、誰一人として手を抜くことがなかった精一杯の「はい」。その真っ直ぐな声を聞くたびに、私は「この学年の歩みそのものだ」と感じていました。思えば昇降口で交わしてくれた朝の挨拶も、皆さんの心の温度そのものでした。ほぼ全員が、明るく自然に、時に元気いっぱいに「おはようございます!」と言ってくれました。その自然な温かさは、皆さんの学年名であるenの文字ともどこか重なって感じられます。人と人とが手を取り合う「円」、ご縁の「縁」。学年がともに作ってきた温かな空気そのものです。
思い出を語ればきりがありませんが、限られた時間ですので、最後だからこそ、皆さんの歩みを見守ってきた中で私がずっと心に留めてきた「大切にしてほしいこと」を伝えたいと思います。
それを象徴する2つの物語を紹介します。
1つは、ミラノ・コルティナ冬季五輪の氷上で涙を流したフィギュアスケートのペア、りくりゅう。三浦璃来さんと木原龍一さんのコンビです。ショートプログラムでの痛恨のミス。木原選手は「終わった…」と肩を落とし、翌日になっても涙が止まりませんでした。しかし、三浦璃来選手は、その隣で静かに寄り添い、コーチたちも彼の背中を支えました。その日のフリー。彼らは「ふたりで立つ」ことを選び、恐れを越えてリンクに飛び出し、世界最高得点で逆転の金メダルを掴みました。
このエピソードからは、これからの人生においてとても大切な2つの力が浮かび上がってきます。1つは本人の不撓不屈の努力、もう1つは周囲の温かな支えです。
失敗を恐れず挑む勇気と、あきらめない心が未来の扉を開きます。どんな小さな一歩でも、進み続けることで必ず光は見えてきます。同時に、友や家族、先生、地域の方々…。皆さんを信じ、成長を願い、陰で支えてくれた人たちがいるからこそ、今日の皆さんがあります。努力できる環境自体、そんな周囲の支えによって作られています。私たちは一人のようでいて、決して一人ではありません。そして人は、誰かに支えられることで自分の力以上のものを発揮できます。
もう1つ、皆さんに紹介したい言葉があります。「ゆたぼん」という人をご存じですか?小学校・中学校と不登校を経験し、YouTuberとしても話題になっていた人で、現在は日本航空高等学校通信制課程に通い、高卒認定試験に合格するなど、自ら道を切り開いている若者です。彼は16歳のとき、同世代に向け、「君の人生の責任は、僕も含めて誰にも取れない」、「自分の人生の責任は自分でしか取れない」と語りました。若いうちは、目先の不都合を回避するために、都合よく支えてくれる周囲の人を使ってしまいがちです。ゆたぼんさん曰く、「今はそうしてても守ってもらえるけど、成人したら僕も君も“大人”と呼ばれるから、そのときまでにちゃんと社会に出ていけるような人になろうな」…一見、冷たく厳しいように聞こえます。しかしその奥には、「だからこそ、自分の人生は自分で選んでいい」という、翼のような、力強いメッセージも感じます。しかも彼は、こうも語っています。「人間は一人では生きていけない。助けが必要なときは『助けて』と言う勇気を持ってほしい。」
「自分で立つ力」と、「支え合うことへの勇気と感謝」
これは先ほどのりくりゅうペアのドラマとも響き合います。
人生は、思いどおりに進む日ばかりではありません。うまくいかないこと、悔しい思い、それでも前に進まなければならないときが、必ずあります。そのとき、挑戦するか、足を止めるか。失敗を恐れるか、可能性を信じるか。でも覚えておいてください。
あなたの人生の舵取りをするのは、あなた自身です。
「自分で舵を握るとき、人は強くなる」、「支えを求めるとき、人は優しくなれる」
この2つを併せ持つ人を、私は「本当に強い人」だと思っています。どうか、自分が選んだ道を信じて進んでください。失敗を恐れず、挑戦を楽しみ、そして時には友に、誰かに、頼る勇気をもってください。まだそこまでの友と出会っていない人、大丈夫。これから出会います。皆さんの人生は今がゴールじゃない。この先の未来も続くのですから。これから、出会うんです。
皆さんの未来は、まだ白紙のキャンバスです。りくりゅうペアが空高く舞い上がったように、皆さんもどうか自分を信じ、いつか出会う最高の仲間と手を取り、「自分で立つ力」と「支えを求める勇気」を胸に、自分だけの大きな円を、素敵な軌跡をそのキャンバスに描いていってください。
保護者の皆様、本日は、お子様が立派に卒業されますことを、心よりお祝い申しあげます。中学校卒業という節目を迎えられ、これまでのご苦労も、大きな喜びに変わっていることと存じます。この三年間、本校の教育活動に格別のご理解とご協力をいただきましたことを、全職員とともに感謝いたしております。これからも、お子様が、人々とともに生きてゆく中で支え合い、ここで培った優しさと、これまでもこれからも磨き続ける強さをもって、健やかに、たくましく成長されますようお祈り申し上げます。
名残は尽きませんが、心優しきen学年の皆さんに幸多からんことを祈念して、はなむけの言葉といたします。
卒業、おめでとう。
令和8年3月6日
豊田市立若園中学校長 神戸勝一